経営情報モデル マズローの 情03ー273 【1.はじめに】現代において、「食べるために、何が何でもこの仕事を続けなければならない」と思っている社会人は多くないように思う。人間の思考は社会環境に合わせて変化していく。高度成長時代のサラリーマンの仕事に対する考え方と、現代のサラリーマンの仕事に対する考え方は、大きく違ってきているのではないだろうか。単純に、上から命令されてその仕事の範囲をこなすだけで、満足できるサラリーマンの割合は、確実に減っている。では、人は何故働くのか。それは、人から認めてもらいたい。もしくは、人のために役に立ちたいと思うからである。人間は、ある欲求が満たされると次の段階の欲求がほしくなる。このことについて研究したのが「マズローの欲求階層説」である。 【2.マズローの欲求階層説とは】 マズローは、人間の欲求は階層構造を形成しており,下位のものが充足されるごとにより上位の欲求を満たそうとすると主張している。その欲求とは低次のものから順に以下のように構成されている。 【3.自己実現欲求について】生理的欲求から、安全・安定欲求、所属・愛情欲求、自尊欲求までの4つの欲求と最上位に位置する自己実現欲求との間には、決定的な相違がある。すなわち、前4者は満たされればその欲求は消滅するのに対し、自己実現欲求は満たされても消滅せず、むしろ満たされれば満たされるほど強化される性質をもっている。例えば、食欲という生理的欲求は十分に食事をすることによって満たされるが、画家や音楽家、科学者などのが求める、自己実現欲求はどれだけ欲求を満たそうとしても満たされない。むしろ、自己実現欲求は満たされることにより、励まされ、いっそう高い成功、成果を求めて動機づけられる傾向がある。この点から、前4者を「欠乏欲求(欠乏動機)」、自己実現欲求を「成長欲求(成長動機)」と呼び、対比することができる。 【4.自己実現とユーサイキアン・マネジメント】マズローは自己の経験やドラッカー、リッカート、マグレガー、アージリスらの理論の批判的摂取から、「ユーサイキアン・マネジメント(健全な心理的経営)」を提唱している。要約すると従業員が自己実現の欲求を満たし、健全な人間に成長できるような経営管理的条件を整えるということである。「3.自己実現欲求について」の項であげたように、マズローにあっては、自己実現し、成長しつつある人間は、精神的に健康であり、生産的であり、創造的なのである。そのような条件を整えること自体が、とりもなおさず経営の利益でもあるのである。マズローは、「健全な心理的経営」の基礎的仮定として多くの必要条件や仮定を列挙しているが、主なものに以下のものが挙げられる。 【5.現代社会における欲求論】野村総合研究所による「若手がやりがいを感じる仕事」の調査(http://www.nri.co.jp/news/2005/051205.html)は以下のようになっている。 <どんな仕事に『やりがい』を感じるか(3つまでの複数回答、N=1,000)> ○報酬の高い仕事:29.0% 一番割合が高かった「報酬の高い仕事」というのは、その報酬を食費などの生活費にあてたいからとも考えられるが、そのお金を趣味などに使い、自己実現したいのではないだろうか。2位以下も自己実現に関係する結果が多い。現代は正社員の求人が減り、派遣社員やアルバイトの求人が増えている。このことは先ほどの結果と逆で自己実現欲求以下の欲求が満たしやすく、自己実現欲求が実現しにくくなる傾向があるように思う。物や情報であふれた現代社会において、会社が社員に供給すべきものはお金などの最低限のものは必要であるが、社員の自己実現のための工夫が一番求められているのではないだろうか。 参考URL:「行動科学的組織論」http://homepage1.nifty.com/aokik/2001/ko07.html |